THE コツ™ TOOLsでは坐位姿勢・立位姿勢ともに、鳩尾(みぞおち)の力を抜き、柔らかく保つことを提唱しております。
鳩尾をゆるめ、柔らかく保つことがなぜ良い姿勢・良い動きにつながるのかを考えてみましょう。
鳩尾はどこにある?
鳩尾の位置は、肋骨中央の割れている部分※とおへそとの間あたりと覚えておきましょう。
(※左右の肋骨弓が交わるところ.剣状突起.)
鳩尾のゆるみレベルをチェック!
鳩尾の位置がわかれば、次にこの鳩尾に指先を突き立て、背中の方へ向かって押し込んでみましょう。
あなたは、 A B C D どのゆるみレベルでしょうか?
A:皮膚表面に近いところで押し返され、指が入っていかない
→ 相当硬いです…。背中もガチガチに凝り固まっていませんか?
B:第一関節まで指先が入る
→ まずまずのゆるみ具合ですね。
C:第二関節あたりまで指先が入る
→ いい具合にゆるんでいます!
D:腹部大動脈の拍動を感じる
→ 十分ゆるんでいます!
お腹を上下に分けて考えよう!
体幹部分はしっかりと安定させられる能力と、しなやかに動ける可動性の両方が非常に重要な部分です。
安定させるばかりで身体を硬くしすぎてしまうとしなやかさが失われ、
逆に可動性ばかり高くて、ぐにゃぐにゃと安定しないと瞬間的に大きなパワーを発揮することができません。
そこで、お腹(腹筋)を一つのものとして考えるのではなく、おへそを中心に上下に分けて考えてみるのです。
お察しの通り、ヘソから下は『丹田』(タンデン)、もしくは『臍下丹田』(セイカタンデン)と呼ばれる部分です。
臍下丹田といえば身体を安定させるために意識すべき非常に重要な部分ですね。
臍下にはすぐに骨盤があり、骨盤そのものにはほとんど可動性がありません。
姿勢保持、動作時には臍下丹田に存在する腹筋にはハリを持たせることによって、腹圧を高め姿勢・動作の土台としての機能を果たす必要があります。
逆にお臍から上の『鳩尾』(ミゾオチ)まで硬くしてしまうと、体幹部分の可動性が失われてしまいます。
この鳩尾はなるべく柔らかく保ち、体幹部分を柔らかくしなやかに動かす機能を果たす必要があります。
しかしこの鳩尾部分は、「気をつけ」のイメージで姿勢を良くしようとすると背中に力が入って突き出てしまいやすく、下手に姿勢を良くしようと意識し過ぎると硬くなってしまいやすい部分なのです。
動かすべき部分と安定させるべき部分
上記のように動かすべき部分とは『鳩尾』、安定させるべき部分とは『臍下丹田』のことです。
お腹をこのように2つに分けて、役割分担をしっかりと担ってもらいましょう!
鳩尾をゆるめると背中が楽になる
先ほど、「気をつけ」のイメージで姿勢を良くしようとすると背中に力が入ってしまうことを述べました。良い姿勢を保とうとして背中が疲れやすい方は、この背中に力を入れすぎている、入れっぱなしにしていることが大きな原因です。
このような方は程度の差こそあれ往々にして、鳩尾を前方へ突き出し、鳩尾を硬くしてしまっています。
そしてこれは、反り腰にも繋がります。
自分自身は背中に力が入りすぎてしまっているのだろうか…?
日常的に力が入り過ぎてしまっていると、それが当たり前になっているのでなかなか気付くことができません。まして背中は触れて確認することも難しい場所です。
ではどのようにして背中に力を入れ過ぎてしまっているのかどうかを見極めるのか。
先程チェックしたように、
『鳩尾に軽く指先を突き刺すように当て』、日常的に緩み具合をチェックするのです。
『反り腰』の解消に不可欠
一度やってみるとわかりますが、鳩尾を柔らかくすることができると同時に自然と背中の力も抜けていきます。
逆もまた然りで、背中の力を抜くことができると、自然と鳩尾も柔らかくなります。
先程『鳩尾のゆるみレベルをチェック!』しましたが、それを日常的におこなう癖をつけることによって、鳩尾の緩みレベルが高まり、同時に反り腰の癖も修正されやすくなるのです。
背中の力が抜けた状態が維持できてくると、自然と下腹部にも力が入りやすくなるので一石二鳥です。
仏像の鳩尾もゆるんでいる
矢田部英正氏は著書『たたずまいの美学ー日本人の身体技法ー』の中でこのように述べています。
上体の力が抜け、下半身に安定感がある日本の仏像の特徴は、禅の言葉で「上虚下実」とも言われ、日本に古来伝承されてきた身体技法ないし身体能力上の必然によるものであることが考えられる。
白隠は『夜船閑話』のなかで、まず「鳩尾をゆるめることが肝要である」と教えているのだが、実際に鳩尾の緊張をゆるめようとすると、その裏側に位置する第七胸椎周辺部が後彎曲してくる。運慶の「大日如来坐像」に見られる胸部彎曲は、他の仏坐像に対して際立っているが、これは鳩尾の弛緩にともなう「上虚」の形態的な指標と見ることができる。
矢田部英正 著:たたずまいの美学ー日本人の身体技法ー.中央公論新社.2011.pp145−150.
さらに「大日如来坐像」の臀部は豊かな丸みを帯びて骨盤が前傾し、ウェストは柔らかく引き締まって大きな「くびれ」を示す。通常このような骨盤の立て方をすると、反射的に胸が張り出し、鳩尾から肩にかけての筋肉が緊張してしまう。この姿勢は、腰や背中の筋緊張をゆるめて、腰背部の柔軟性が十分に養われない限り、容易に実現できるものではない。
禅の坐相を「上虚下実」と表現することはすでに指摘したが、「上虚」とは上半身全体をリラックスさせるから、唐様仏の塊量的な胴体とは真逆の体幹をつくるはずである。和様仏に特徴的な削ぎ落とされた胸の量感は、「上虚」と重なる。さらに「大日如来坐像」に見られる、腰部の前傾と脱力した上半身の造形には、古来禅の提唱してきた坐法の特色が、余すことなく表現されている。
瞑想状態に入り、悟りの境地に至るにも床坐姿勢を安定させるための骨盤コントロールと鳩尾の緩みは不可欠のなですね。
この状態の姿勢を椅子を通して身につけようとしているのが、THE コツ™️ チェア シリーズの椅子であり、
立った状態で身につけるのがLaboo.であり、ガンシナーなのです。
『使える体幹』に必要な鳩尾の可動性
さて、鳩尾を緩めることができれば、今度は可動性を引き出していく必要があります。緩んでいることを大前提に、みぞおちが自由に動けるだけの筋肉の柔軟性を作りましょう。
普段からみぞおちを緩め、その可動域を引き出しておくことによって、自然とお腹の筋肉が使いやすくなり、
『使える体幹』にもなっていきます。
ぜひお試しくださいね。